代表世話人の挨拶

藤田正博
(上智大学・理工学部・物質生命理工学科 教授)

第1期の柔粘性結晶研究会の代表世話人を仰せつかりました。本研究会の発展に微力ながら尽力したいと存じます。

柔粘性結晶と液晶は、ともに中間相として分類されます。ディスプレイとしてすでに社会実装されている液晶と比較し、柔粘性結晶の知名度は低く、応用に関しても決定打がない状況です。しかし最近では、漏液のない安全な蓄電池開発への社会的要請を追い風として、柔粘性結晶からなる固体電解質を用いた蓄電デバイスの開発が活発化しております。この流れは今後益々加速し、国際競争も激しくなることは間違いないでしょう。今こそ、柔粘性結晶の基礎物性の理解および基礎知見の集積が重要であると感じております。本研究会が中心となって、柔粘性結晶の研究を活性化させ、柔粘性結晶が様々な分野で大きく羽ばたくことを期待しております。

○柔粘性結晶研究会とは

柔粘性結晶の歴史は古く、1938年にはベルギーのJ. Timmermansが、「配向状態は融けているが、重心位置は秩序だっている相」をplastic crystalと名付けております。同時期に、大阪大学の仁田勇先生、関集三先生の研究グループが、この中間相に気づき、構造、熱物性、分子運動に着目した研究を活発に展開し、plastic crystalを「柔粘性結晶」と日本語訳しました。1940〜60年代、大阪大学を中心とした関西で、柔粘性結晶の物性・構造の系統的かつ多角的な研究が進められ、「plastic crytal研究の世界の中心」とも言われていたそうです。先人の偉大さに、ただ感心するばかりです。柔粘性結晶の研究を再び活性化させ、個人間だけなく、法人も含めた情報交換の場を提供し、関連分野のさらなる発展の礎とするため、当「柔粘性結晶研究会」を発足させました。今後、勉強会や講演会の開催、機関誌の配布、ホームページを活用した情報発信などを通じて、当研究会を機能させるべく努力する所存ですので、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

代表世話人             藤田正博(上智大学)
世話人                     西川惠子(豊田理化学研究所・千葉大学)
                                松本一彦(京都大学)
                                持田智行(神戸大学)
                                守谷 誠(静岡大学)
                                阿部洋(防衛大)
                                西直哉(京大)
                                本多尚(横浜市立大)
                                山田鉄兵(東京大学)